MERIDA SCULTURA 4000 フルオーバーホールレポート(2/2)

2021.07.08
メンテナンス関連

こんにちは。メカニックの渡辺です!

前回に引き続きMERIDA SCULTURA 4000(メリダ スクルトゥーラ)のフルオーバーホールレポートをお届けいたします。

 

作業の順番は前後しているのですが、シフトワイヤー、ブレーキオイル、ホイールの工程をレポートいたします。

 

 

MERIDA SCULTURA 4000 フルオーバーホールレポート

第1話 バイクの分解・異音調査、パーツのクリーニング・組み戻し
第2話 シフト・ハンドル周り、ブレーキ、ホイール周り~フルオーバーホール完了まで ←今回はここ

 

 

シフトワイヤーとハンドルの交換

シフトのアウターワイヤーを古いものから新しいものに入れ替えます。

作業のしやすいようにフレームの角度を変えて行います。

 

 

フロントシフトアウターケーブルは、フレームに内装されています。

BBの下を通りシートチューブから外側に出て、フロントディレーラーに直に接続されます。

 

これは、最近ロードバイクでも増えている内装フルアウターというワイヤールーティングです。

水や砂がアウターワイヤー内部に侵入することがほとんどないのでインナーワイヤーが痛みにくく、軽快なシフト操作が長続きします。

 

インナーワイヤーはポリマーコーティングされたデュラエースワイヤーを使用。

もちろんシフトワイヤー専用のグリスを塗布しております。(アウターワイヤーはデュラエースシフトワイヤー指定のSP41を使用しています)

 

 

次に、ハンドルをエアロタイプに交換させていただきました。

ハンドル周りをすっきりさせたい、というオーナー様のご希望に添えるようにブレーキホースは適正な長さになるようカットいたしました。

 

 

 

ブレーキフルード(オイル)の交換

使用するのはシマノ純正ミネラルオイルです。

気泡にならないようゆっくりとシリンジ(注射器)に充填します。

 

 

オイル交換、ブリーディングはブレーキパッドを取り外した状態で行います。

ブリードブロックと呼ばれるメンテナンス用のパーツをキャリパーにセットし、古いオイルを新しいオイルで追い出していきます。

↓下の写真では、オイルがブレーキローターに付着しないように、ブレーキローターをホイールから外し、バイクにセットしています。

 

 

↓下の写真の白いカップをブレーキレバー上部にあるブリードポートにねじ込み固定します。

オイルが漏れ出ても、すぐに吸収してくれるようにウエスで養生しています。

 

 

オイル交換する際には残留した気泡なども一緒に排出されるためブレーキタッチフィーリングの改善も見込まれます。

↓下の写真のようにホース切断の際に入り込む気泡や、もともと残っていた気泡が古いオイルと共に排出されています。

 

 

それほど汚れるものではないですが、カップの中をのぞくと、細かいカスのような汚れが見受けられました。

 

 

仕上げにキャリパー内に残った気泡を排出する工程です。

ブレーキレバーを握りブリードニップルを一瞬緩めたり、シリンジに負圧をかけて残留した気泡を探ります。

今回はひとつの大きな気泡が排出されました。

 

 

 

ホイールの振れ取りとディレーラーハンガーの調整

装着ホイールはRover CLX32!高性能ホイールです。

まずはハブのグリスアップとスターラチェットオーバーホールです。

 

 

 

 

スターラチェット構造のハブには、DT SWISS ハブメンテナンス専用の工具を使用します。

スターラチェット部のシールリングやリングナットを元通りに組み戻します。

 

 

スターラチェット部には専用のスペシャルグリスを適量塗布します。

グリス量が多すぎると、一瞬空回りする現象が起きる可能性があります。

 

その他フリーボディとシールが接触する部分にはDT SWISSマルチパーパスグリスを使用しています。

 

そして、リングナットにワッシャーをセットし、専用工具でハブに組み戻します。固着を防ぐためマルチパーパスグリスをたっぷりと塗布しています。

 

 

ハブの次は、振れ取りを行います。

フロントは横振れが2mmほど、リアホイールの縦振れは3mm〜3.5mmほどありました。

これは結構大きな振れ幅です。

 

30分ほどかけて修正を行いました。

振れ取りは、一気に取ろうとせずに、少しずつ少しずつ進めたほうが、結果的に早く良い状態にすることが出来ます。

 

このような作業をしていると、約30年ほど前、手組みホイールを杉浦店長から学び、自分で組み上げていたダウンヒル選手時代を思いだします。

 

 

振れ取りながら、センター出しも同時に行っています。

 

 

続きましては、フレームにセッティングしておいたアウターワイヤーに、グリスアップしたデュラエースインナーワイヤーを通していきます。

 

 

リアディレーラーが装着される、ディレーラーハンガーのゆがみの修正も行っています。

どれだけ念入りにシフト調整しても、ここが歪んでいたり緩んでいれば意味がありません。

なお、お客様のホイールを工具で傷つけてしまわないよう、念のために歪みのない当店所有のホイールを装着して、今回の作業は行いました。

 

 

シフトの最終調整で、チェーンが一か所ガイドプーリーからスムーズに抜けられていないコマを見つけました。

じっくり観察してみますと、チェーンインナープレート部分にわずかな歪みが生じており、不具合がでていました。

ぴったりとフィットするヤスリの取手部分を差し込み、修正を行いました。

 

その後は、しっかりとワイヤーの初期伸びを取り、納得いくシフト調整が決まりました。

 

 

 

フルオーバーホール完了!

必要な作業も完了し、最後にLizard skinのバーテープを巻きあげます。

 

 

いよいよ完成です。

フレーム、ホイール、チェーンもダークカラーで非常に渋い!!

 

 

 

サドルは、Specializedのパワーサドルです。使用率が高い人気のサドルです。

 

 

今回交換したエアロハンドルです。

速度が上がれば上がるほどエアロの恩恵を受けられると思います。
ブレーキホースもカットし見た目もすっきりした印象になりました。

 

 

なんと!マウンテンバイク用のブレーキローターを装着されています!

ロードバイクのことを良く知ってみえる、バイクが大好きなお客様なんだと直ぐにわかりますね。

 

 

 

ホイールは定評のあるRovar CLX32を履かれていました!!

こちらのホイールには、セラミックベアリングが装填されており、超軽量で超高性能。

誰もが欲しがる憧れのホイールです。

 

 

ノンドライブサイド側、クランクにスペーサーを3枚追加しました。

 

 

今回のメンテナンス・コンプリートコースでは、ブレーキキャリパーのピストンを目一杯露出させ、イソプロピルアルコールで清掃しています。

そのため、ブレーキパッドの戻りも良くなり、性能を100%発揮してくれていると思います。

↓下の写真の白いピストンがチラ見えしてるのがわかりますか?

 

 

今回のフルオーバーホールレポートは以上となります。

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

ご入庫いただきましたオーナー様、誠にありがとうございました。

ご購入は他店でも、当店をホームと思っていただき、些細なことでもお気軽にご相談ください。

またのご来店を心よりお待ちいたしております。